「対面」と「サイクル」の罠

 

目次

 

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はじめに

 ポケモン対戦、特にシングルバトルを始めてしばらくすると、「対面構築」「サイクル構築」という言葉に出会います。これはとても便利な言葉です。なぜなら、パーティを組み始める際、無限にある6体のポケモンの組みあわせを前にした私たちに、とりあえずの2つの選択肢を与えてくれるからです。 

 ところが、しばしば、この言葉に飲み込まれてしまう人がいます。自分を「対面志向」か「サイクル志向」かに当てはめてしまう人のことです。当てはめるまではまだ良いですが、そういう人は段々と「私は対面しか使えない」、「俺はサイクルしかできない」と思い込んでしまいがちです。おそらく、このような人の多くは、何が対面で何がサイクルなのかを正しく知らない、もしくは考えたことがないのではないでしょうか。そもそも、対面かサイクルかというのは、出来上がったパーティを見て、後から付けられる『タグ』であり、決してプレイヤーに押される『焼印』ではないのです。今回は、対面とは何か、サイクルとは何かについて考えていきましょう。

 

 

対面構築かサイクル構築か

 そもそも、全てのパーティを対面構築かサイクル構築かに分類することは可能なのでしょうか。

 では、この問題を考えるにあたって、下のパーティが対面構築かサイクル構築か判断してみてください。f:id:kikuitiniconico:20180425020726p:plain

zzみみたぶzz さん作成『コケコランドサイクル+対面ルカリザX』https://3ds.pokemon-gl.com/rentalteam/usum/BT-47C1-96C7

 

 いかがでしょう。このパーティ全体を、対面かサイクルか言い切ることはできません。しかし、このパーティは、QRレンタルチームでたくさん使われている、完成度の高いパーティです。

 

 なぜ、対面かサイクルか分類できないパーティが存在するのでしょう。それには、

 ①対面とサイクルは対立しないから

 ②「崩し」要素が存在するから

という2つの理由が考えられます。②の「崩し」とは、ここでは対面やサイクルとは全く異なった概念だと考えていただいて、これについては次の機会に詳しく述べようと思います。今回は①について考えてみましょう。

 

対面構築とサイクル構築の定義 

 では、まず対面構築とサイクル構築の定義について確認しましょう。

 対面構築とは、ポケモンに行動保証を与えること、また、対面からの対応範囲を広げることでポケモンを交代する回数を抑え、行動回数を増やし、ダメージレースに勝つためのパーティを指します。ここでいう、対応範囲は、ほぼそのまま技範囲を指します。そのため、一般的な補助積み技は技範囲を狭めるため、本来の対面構築の意味からは外れます。(わざわざ積み技を考慮外にする理由は、次回以降で「崩し」について述べる際に合わせて説明します。)

 一方、サイクル構築とは、あるポケモンをスタートに、そのポケモンが勝てないポケモンに対し、受け出しから勝てるポケモンを組み込み、さらにその2体で勝てないポケモンに対し、受け出しから勝てるポケモンを組み込み、さらにその3体で勝てるないポケモンに対して……と積み重ねて作られたパーティで、ポケモンを積極的に交代しながら、交代した次のターンを有利な対面にすることを繰り返すことで、行動回数を増やし、ダメージレースに勝つことを目指します。

 ここで分かるように、どちらも「行動回数を増やし、ダメージレースに勝つ」目的は共通しているにも関わらず、「ポケモンの交代」という点において正反対の立場であることがわかります。

 

対面とサイクルが対立しないワケ

 しかし、私は対面とサイクルは対立しない、と言いました。それは、「対面にもサイクルにも属するポケモンがいる」ということです。さらに、厳密に言えば、それは「ポケモン」ではなく主に「技」や「道具」になります。

 

 「対面にもサイクルにも属する技」というのは「とんぼがえり」や「ボルトチェンジ」などの対面操作技です。これらの対面操作技は、本来サイクルを回すことが難しい(裏のポケモンの耐久力が低い)パーティで、サイクルを回したい時に採用されます。本来サイクルを回すことが難しいパーティでサイクルを回すには、相手の交代に積極的に対応する必要があります。そこで、相手の交代に積極的に対応するために、対面操作技が採用されるのです。しかし、「相手の交代への積極的な対応」は、本来のサイクル構築には必要がない要素で、対面構築的な要素と言えます。受けサイクルでこれらの技が採用されることは、ほとんどありません。つまり対面操作技は、「サイクルを回すことを目的しながら対面構築に取り入れられる技」なのです。

 また、「対面にもサイクルにも属する道具」には、HP回復木の実がそれに当たります。これらの道具は、確定数をずらしてその対面に居座ることを可能にする役割を果たします。例えば、ギルガルドのZシャドーボールでマゴのみを発動させるサンダーがいたとします。このサンダーが持つマゴのみには、通常なら受けきれない範囲を道具によって広げるだけでなく、Zシャドーボール+かげうちで倒されないように、サンダーに行動保証を与え、対面での勝率を上げる目的があります。つまり、HP回復木の実は「対面性能を上げることを目的としながらサイクル構築に取り入れられる道具」と捉えることができます。

 対面構築でありながらサイクルを回したり、サイクル構築でありながら対面性能を上げたりすることが可能ならば、対面とサイクルの間には幅があることがわかります。もし仮に、対面構築とサイクル構築を軸とした直線上に代表的なパーティを並べてみると、以下のようになるでしょう。

※下図は、あくまで、特定のポケモンの組み合わせから「対面構築やサイクル構築へのなりやすさ」を基準に作成したものです。パーティ全体は、ポケモンの型や他の4体のポケモン次第で対面寄りにもサイクル寄りにもできます。また、受けループ(ラキグライ)がブルドヒよりも対面寄りになっているのは、受けループの「詰ませ性能」や「嵌め性能」が非サイクル要素である点を考慮したためです。

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  もし、自分の得意・不得意を対面とサイクルを使って把握したいならば、単に「対面が得意」や「サイクルが苦手」と感覚的に思い込むのではなく、どの位置の対面構築が得意で、どの位置のサイクル構築が苦手なのかを十分に吟味する必要があります。これを吟味しないまま、パーティを組み始めると、何度もパーティを作りかえては失敗することになります。これこそ、対戦初心者から中級者が、はまりやすい「対面とサイクルの罠」なのです。

 

 

対面構築VSサイクル構築

 では、極端な対面構築と極端なサイクル構築を考えた時、この2つはどちらが強いのでしょう。答えは、サイクル構築です。理由は簡単で、本来の対面構築において、つまり行動保証と技範囲のみを追求した対面構築には、極端なサイクル構築、つまり受けループや受けサイクルを突破する手段がないからです。行動保証は受けループや受けサイクルを相手にほとんど意味をなしませんし、対面構築側はどんなに頑張っても、アイテムによる火力アップか技範囲を広げることしかできません。タイプ相性のレベルでしか対処できないのです。しかし、受けループや受けサイクルは相手からの攻撃に物理・特殊レベルで対処することが可能です。また、サイクル構築側に回復ソースがある以上、ターン数はどんどん重なり、PPの消費も相まって、どんどんサイクル側に有利になることが想像されます。

 これを聞くと、サイクル構築が無敵に思われますが、もちろん実際はそうではありません。では、私たちは普段どのようにサイクルに対して対応しているのでしょうか。

 方法の1つは、対面操作技です。交代をしながら攻撃すると同時に、有利対面を維持することで対面操作技を持っていないサイクル構築にはダメージレースで優位に立てます。しかし、対面操作技自体の威力は低く、さらに相手側に回復ソースが存在することを想定すると、これは現実的な対処方法とは言えません。

 例えば、ラッキー・ドヒドイデを相手に、とんぼルチェン持ちのフェローチェジバコイルで戦うことを想定してみましょう。フェローチェのとんぼがえりはドヒドイデジバコイルボルトチェンジはラッキーで受けられることになるので、1サイクルで稼げるダメージはラッキーに対するジバコイルボルトチェンジのダメージのみです(ドヒドイデは特性さいせいりょくで回復)。このサイクルが永遠に続けば、そのうちラッキーは倒れるのですが、もちろんラッキーには技「たまごうみ」があります。有利対面は維持できているので、ラッキーがたまごうみをするタイミングを狙って、フェローチェが「とびひざげり」をすれば勝てるのですが、何サイクルも同じことを繰り返される中で的確にたまごうみのタイミングを予測するのは非常に難しいです。このように、対面操作技のみでは、サイクル構築を突破するのが難しいことがわかります。

 そこで、私たちはサイクル構築に対抗するため、対面にもサイクルにも属さない「崩し」の要素をパーティに組み込みます。この「崩し」の存在により、実際の対面構築はサイクル構築以上の強さを発揮できるのです。「崩し」とは何かについては、「崩し」と関係が深い受けループの突破手段をテーマにして、次回、詳しく述べたい思います。

 

 

おわりに

 今回は、「対面」と「サイクル」の意味を、2つの関係性に注目しながら考察しました。しかし、今回考えてきた対面とサイクルの意味と関係というのは、私が5年前にポケモン対戦を始めてから、つい最近まで自分の中にもやもやとした疑問のまま残っており、はっきりしなかった部分です。この記事で、その疑問に対して一つの回答を見つけたと思っていますが、まだまだ考察の余地はあります。よろしければ、皆さんのご意見・ご感想をTwitter @kikuitiniconicoまでお寄せください。最後までご覧いただきありがとうございました。